間 欠 的 に 失 火 す る

   ■車両データ

●車種名 メルセデス・ベンツ 202020
●年式 1997年
●走行距離 101,314km

●症状は?
 エンジンをアイドリング状態にしておくと「ドドン、ドドン」と間欠的に失火する。 エアー・コンディショナーを入れて、ギヤーをDにすると特に激しく失火する。しかし、走行中にエンストすることはない。というものである。

●故障メモリー呼び出し

  最初に故障メモリーを呼び出す。『ホットフィルムエアーセンサ−、イグニションステージ1.cyl.1中断、イグニションステージ1.cyl,1,4中断、イグニションステージ2.cyl,1,2中断、イグニションステージ2.cyl,1,3中断』と出てくる。
  いったん故障メモリーを消去して、再テストをすると『故障認められず』と出てくる。 この自動車にはイグニション・コイルが2個取り付けられている。


●イグニション・コイルとスパーク・プラグキャップ点検

  イグニション・コイルを取り外し、抵抗を測る。1次側が0.9Ω、2次側が7.87Ωである。これは2個ともほぼ同じ数値である。
  次に、スパーク・プラグキャップの抵抗を測る。スパーク・プラグワイヤーの付いた長いほうが2.09KΩと2.13KΩで、短いほうが1.87KΩと1.90KΩであり、これは正常であると判断した。


●スパーク・プラグ交換

  イグニション・コイルやスパーク・プラグキャップの抵抗テストでは全く異常が見られなかったので、スパーク・プラグを交換した。
  スパーク・プラグを交換したところ、アイドリングが非常に安定しているので、喜んで試運転に出かけた。ところが、赤信号で停車していると、又しても「ドドン、ドドン」と間歇的に失火する。間歇的な失火の原因はスパーク・プラグではなかったのだ。


●原因追求

  「イグニション・コイルの巻き腺は切れていない」「スパーク・プラグワイヤーも切れていない」しかし、失火は依然として発生する。これらのことを総合して考えると、失火の原因はクランク角センサーの不具合、コントロール・ユニットの不具合、イグニション・コイルの二次捲き腺の内部ショートしか考えられない。  そこで、モ−ター・スコープによるイグニション・コイルの単体テストをした。 2番の点火の波形が乱れていることに気付いた。イグニション・コイルの二次捲き腺の中で火が飛んでいるようである。失火の原因はイグニション・コイルの不良である。
  一説によれば、2個あるイグニション・コイルは、1セットとして交換したほうが良いといわれているが、今回は費用の関係で不具合のあるものだけを交換した。


●イグニション・コイルのテスト

1.イグニション・コイルの絶縁不良は故障診断スキャナーでは分からない。

2.完全に失火しているものは自作の簡易式火花テスターで調べることが出来る。 このとき、火災事故を防ぐためにスパーク・プラグは外さない。

3.時々失火する場合にはイグニション・コイルテスターを使って、モーター・スコープの波形で良否の判断をする。

4.波形はきれいな減衰波形が現れていなければならない。 乱れがある場合には内部でショートしている。


●イグニション・コイルが壊れやすくなった原因

  ポイント&コンデンサー・システムの点火装置ではイグニション・コイルは殆ど故障することなく、半永久的に使用することが出来た。近年イグニション・コイルが不良になって失火するケースが多くなった原因として次のことが考えられる。

1.イグニション・コイルが小型軽量化され、それに伴って絶縁が悪くなった(プラスとマイナスの距離が短くなれば、絶縁は悪くなる)

2.イグニション・コイルの性能が良くなり、スパーク・プラグの火花間隙が広くなっても火が飛ぶので、失火しなくなった。それに伴って、スパーク・プラグを交換しなくなり、スパーク・プラグの要求電圧が高いまま使い続ける結果、イグニション・コイルの捲き線の中でショートするようになった。 (ポイント&コンデンサー・システムの時代には車検のたびにスパーク・プラグとポイントを交換したものである)

3.イグニション・コイルの取り付け位置がシリンダー・ヘッドの上になり、エンジンの熱を受けやすくなり、温度が上がり内部ショートを起こすようになった。

4.ポイント&コンデンサー・システムに比べて、トランジスター点火装置は一次側のON/OFFが不完全なため、火花が小さくなる。 それを補う為、大きな電流を流して火花を確保しなければならず、イグニション・コイルの温度が高くなる。

5.日本はドイツに比べてアイドリングの時間が長く、走行距離の割にイグニション・コイルの負担が大きい。その為、作動温度が高くなり絶縁が破壊されやすくなる。

(注)エンジン・ルーム内の配線がバリバリになるのは異常高温の証拠である。


●イグニション・コイルを長持ちさせるには

  1.エンジンの温度を上げない、水温は90度C以下で使用する。
  2.火花の飛びやすいスパーク・プラグを使用する。
  3.40,000km走ったならスパーク・プラグを交換する。


●整備を終えて
   点火システムの不具合でエンジンが失火する場合には、間歇的にエンジンの回転が下がる。 イグ ニション・コイルの良否は捲き線の抵抗測定だけでは分からない。
   最も多く発生している二次コイルの絶縁不良は、イグニション・コイルテスターとモ−ター・スコープを 併用し波形を調べれば、波形の乱れから不具合はすぐに分かる。
   そこで今後、簡単にイグニション・コイルのテストが出来るように、一次腺のソケットを購入し、テスト ・リードを製作した。こうしておけば、今後イグニション・コイルの点検が楽に出来る。

写真解説  メインテナンスを振り返る

エンジンをアイドリング状態にしておくと「ドドン、ドドン」と間欠的に失火する。

バルブ・カバーの上にある点火装置のカバーを外したところ。
破線の部分に見られるのは2個のイグニション・コイル。 右側がエンジンの前方になる。

エアー・フローメーターを破線のようにスロットル・バルブに直接取り付ければ、エアークリーナーを使わないで、エンジンを回すことが出来る。


スパーク・プラグワイヤーに25,000ボルトの電圧を加えて絶縁テストをしている。漏電の形跡はなく、絶縁は完全である。 スパーク・プラグキャップに25,000ボルトの電圧を加えて絶縁テストをしている。漏電の形跡はなく、絶縁は完全である。


スパーク・プラグキャップの抵抗を測定している。
抵抗値は1.87KΩで、 不具合はない。

イグニション・コイルの1次捲腺の点検をしているところ。
捲線の抵抗値は0.9Ωで、不具合はない。

イグニション・コイルの2次捲腺の点検をしているところ。
2次捲腺の抵抗値は7.87KΩで、不具合はない。

3番のスパーク・プラグ・ワイヤーの抵抗を測定しているところ。
抵抗値は2.13KΩで不具合はない。
1番のスパーク・プラグ・ワイヤーの抵抗を測定しているところ。
抵抗値は2.09KΩで不具合はない。

スパーク・プラグ内臓の抵抗器を測定しているところ。
7.08KΩで不具合はない(ボッシュ)
スパーク・プラグ内臓の抵抗器を測定しているところ。
4.57KΩで不具合はない(NGK)

交換したスパーク・プラグ。
破線の部分の汚れが失火の原因になることもある。 掃除してもきれいにならなかった。

カムシャフト・センサー。 ソケットの接触不良を調べるためにカバーを外したところ。
この部分には問題はなかった。


イグニション・コイルテスターを使って、2番用イグニション・コイルの出力波形を観測している。この波形は正常である。

イグニション・コイルテスターを使って、3番用イグニション・コイルの出力波形を観測している。破線の部分は火花があちこちに飛んで、波形が乱れ、絶縁不良を示している。

イグニション・コイルテスターを使って、4番用イグニション・コイルの出力波形を観測しているところ。
この波形は正常である。
汎用のテスト・リード(1)を使ってイグニション・コイルのテストをしている。  

イグニション・コイルテスターを使って、1番用イグニション・コイルの出力波形を観測している。
この波形は正常である。

新品のイグニション・コイル。
2番用イグニション・コイルの出力波形。旧品に比べて、出力電圧が低いが、波形は安定している。
1はイグニション・コイルをテストする為に作ったテスト・リード。

新品のイグニション・コイル。
3番用イグニション・コイルの出力波形。
旧品に比べて、出力電圧が低いが、波形は安定している。
1はイグニション・コイルをテストする為に作ったテスト・リード。
2はスパーク・プラグワイヤー


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